福井地方裁判所敦賀支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人両名を各罰金五万円に処する。
右罰金を完納できないときは金弐百五拾円を壱日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。
押収の外国製腕時計ロダニヤ六個(証第一号の一ないし六)、ルビス四個(証第二号の一ないし四)、ヘソ一九個(証第三号の一ないし一九)、エニカ二九個(証第四号の一ないし二九)、シーマ五個(証第五号の一ないし五)、モリス五個(証第六号の一ないし五)、ベンフリ五個(証第七号の一ないし五)、アバロン二個(証第七号の六、七)、エロガア二個(証第七号の八、九)は被告人平田から没収する。
ヘソ一個(門田中一に対する関税法違反被疑事件につき福井地方検察庁敦賀支部領置に係るもの。同支部証第一号)、ロダニヤ三個(同事件同支部証第三、第九、第一六号)、ベンフリ三個(同事件同支部証第二二、第二四、第二六号)は被告人両名から没収する。
ロダニヤ、ヘソ、ルビス、ムーヴメント各一個(田淵幸彦に係る関税法違反嫌疑事件につき神戸税関大蔵事務官本藤政二が昭和三三年八月二八日領置に係るもの)、ムーヴメント一個(佃和男に係る関税法違反嫌疑事件につき神戸税関大蔵事務官浦辺茂が同日領置に係るもの。)、ムーヴメント一個(三原朝夫に係る関税法違反嫌疑事件につき小松島税関支署大蔵事務官藤本正敏が同月二三日領置に係るもの。)は被告人両名から没収する。
被告人平田から金弐拾弐万四千五百円を追徴する。
訴訟費用は被告人平田の負担とする。
理由
一、事実
被告人平田は昭和三二年一二月頃失職し爾来徒食していたもの、被告人北岡は復員後転々職を変え一時は密輸の烟草買い等に従つたことのあるものであるが、
第一、被告人平田は
関税逋脱品であることの情を知りながら
(一)別表一記載のとおり昭和三三年六月初頃から同年八月初頃迄の間四回に亘り明石市大久保町中の番六一九番地飲食店やよいこと被告人北岡方外一箇所において、被告人北岡から外国製腕時計合計一三九個を有償取得し、
(二)昭和三三年八月三日別表二記載の外国製腕時計合計一〇個を明石市太寺四丁目五五番地の自宅から敦賀市白銀町迄携帯して運搬し以て右(一)、(二)の期間中外国製腕時計合計一四九個を取得ないし運搬し、
第二、被告人北岡は
関税逋脱品であることの情を知りながら、別表三記載のとおり昭和三三年六月初頃から同年七月末頃迄の間四回に亘り明石市大久保町中の番六一九番地の自宅外一箇所において、氏名不詳者から外国製腕時計七七個を有償取得し
たものである。
二、証拠(省略)
三、弁護人の主張
被告人平田の弁護人は敦賀税関支署長は同被告人につき本件の情状懲役刑に処すべきものと認め、関税法第一三八条第一項但書、第一号に基き通告処分を経ることなしに直ちに告発したが、本件は明らかに罰金刑相当の事案であり、現に検察官も本件につき罰金刑相当の意見を開陳しているのであるから、同支署長としてはすべからく本件を通告処分に付し、これが履行のなかつた場合に始めて告発の手続に出ずるべきであつたのであつて、この措置をとらないで直ちに告発したのは関税法が告発に先だち通告処分による罰金額等の納付を期待している精神を没却するもので到底許さるべきものではなく、従つてかかる告発はその本来の効力を生ずるに由なく、これを前提として提起された本件公訴も亦手続上無効に帰し棄却を免れないと主張する。
然しながら告発の要件である情状懲役刑に処すべきものであるか否かの認定は当該税関支署長の裁量に任されていること関税法第一三八条第一項の解釈上明らかなところであるから、権限ある税関支署長の認定に基きなされた本件告発はその当否を云為するまでもなく適法である。のみならず右認定が著しく常規を逸脱していると認むべき資料もない。そして検察官が後刻右事件につき税関支署長と意見を異にし罰金刑相当の求刑をするに至つたとしても、さきになされた右告発の効力に影響を及ぼすものではないこというまでもないから右告発を基礎とする本件公訴も亦適法であること勿論である。従つて弁護人の右主張は採用し難い。
四、適条
被告人両名の判示各所為は被告人毎に一括して各関税法第一一二条第一項、第一一〇条第一項に該当するので、所定刑中罰金刑を選択しその金額の範囲内において被告人両名を各罰金五万円に処し、右罰金を完納できないときは刑法第一八条により金二五〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置し、主文第三ないし第五項掲記の各押収物件はいずれも本件犯罪に係る貨物(主文第四項掲記の物件については門田中一の検察官に対する昭和三三年八月二八日付供述調書謄本、第五項掲記の物件については同項記載の各犯則嫌疑者に対する大蔵事務官の質問調書及び領置調書の記載によつて明らかである。)であるから、関税法第一一八条第一項により主文掲記の区分に従い被告人等からこれを没収し、本件犯罪に係る貨物のうち一部(別表一、1、ムーヴメント四一個のうち二六個、同2、ルビス二四個のうち一九個、同3、ヘソ七個のうち五個、同3、ロダニヤ一〇個のうち六個、同四エニカ三二個のうち三個以上合計五九個)は本件犯行後被告人平田から情を知る兵庫県下その他の時計商等に売却され、ついで情を知らない顧客等第三者の取得するところとなつたため没収することができないので関税法第一一八条第二項に従い右没収不能物件の犯行当時における価格相当金額合計二二四、五〇〇円(価格算定の基礎たる事実は大蔵事務官伊藤守作成の昭和三三年一一月一九日付犯則物件鑑定書中の記載―但し番号1のうち一個、同9、10各一個、同11三個、同22一個、同27一個、同29三個、同34、35各一個は主文掲記押収物件につき価格に合算しない―によつて認め、価格算出の基準は昭和三〇年(あ)第二六一五号、昭和三二年二月一四日第一小法廷判決に従う。)を被告人平田から追徴すべきものとし(右追徴すべき物件は被告人北岡が逋脱品たる情を知悉の上氏名不詳者から取得し、次いで同被告人平田においてこれを有償取得したものに係るので、被告人北岡からも同額追徴し両名連帯してこれが納付の責を負担せしむべき関係にあるのであるが、被告人北岡に対しては右物件取得の点につき公訴の提起がなく、従つて審理の対象となつていないので同被告人からはこれが追徴をしない。)訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項に従い被告人平田に負担させる。
よつて主文のとおり判決する。(昭和三四年一二月一四日福井地方裁判所敦賀支部)
(別表は省略する。)